ユーザー離れを防ぐオンボーディングとは?

アプリ運用を始めて真っ先にアプリダウンロード数をKPIにする管理者さんも多いと思いますが、ダウンロード数 ”だけ” をゴールに設定していませんか?
ダウンロード数ももちろん大切なのですが、アプリを導入している店舗や企業の最大の目的はファンの育成ですので、ダウンロードしてくれたユーザーが、あっという間に離脱(アンインストール)してしまっては元も子もありません。

市場によっては、90日後のエンゲージメント率はたったの4%とも言われています。アプリダウンロード後もユーザーのブランドへの関心を高く保ち、継続してアプリを使ってもらいたいものです。

エンゲージメントの維持の為には「オンボーディング」が重要です。本記事ではアプリにおけるオンボーディングについて、詳しくご案内していきます。

オンボーディング

とは?

オンボード(on board)とは飛行機や船に”乗る”という意味があります。これにingをつけて動名詞化したオンボーディング(on-boarding)は、新しく乗りこんできたクルーに対して必要なサポートを行い、文化に慣れてもらうための一連の受け入れ、プロセスを指します。

主に、人事・採用のシーンで新人研修・入社研修といったオンボーディングが行われています。新入社員の定着と、パフォーマンスを最大限発揮して活躍できる未来への第一歩として、先輩社員とのランチミーティングや、オリエンテーション、スキルに応じたOJTを実施したりして、ハード面・ソフト面から必要なサポートをした/してもらった経験がある方もいるのではないでしょうか。

アプリにおいても同様で、新規ユーザー、つまり初回ダウンロードユーザーが、ダウンロード直後のモチベーションや関心をこの先も維持し、ブランドのファンやヘビーユーザーに成長してくれることを目指すには、ユーザーオンボーディングが必要なのです。アプリにおけるオンボーディングは、初回インストールを検知して自動で表示されるチュートリアルが最も一般的です。

オンボーディングを

行う目的と重要性

ユーザーの初期離脱防止

先述したように、市場ではアプリインストールから90日後のエンゲージメント率はたったの4%と言われています。具体的には、ダウンロードしてから1日後には約7割のユーザーが離脱、さらに3日後には77%が離脱していると発表している企業もあります(Quettra社)。
いかにユーザー獲得後のキープが難しいかが分かります。

また、ジャストシステム社が2015年に行ったアンケートで、どんなときにアプリをアンインストールするか?という問いに対して「操作がわからなかったから」と4割のユーザーが回答していることからも、初回インストール後のチュートリアルを通してアプリの操作方法や活用メリットを分かりやすく伝えることが重要と言えます。

コスト削減

オンボーディング=コスト削減とすぐに結びつかない方も多いかと思いますが、ビジネス一般において、新規客の獲得よりも既存客のロイヤル化の方がコストが低いと言われています。二八の法則(2割の優良顧客が売上の8割を構成している)とも言われるように、むやみに新規ユーザーを増やすのではなく、ヘビーユーザーへの定着を図るほうが効率的と言えます。

それだけでなく「アプリの使い方が分からない」といったお問い合わせに対応する人的コストも削減できます。飲食店やアパレル店で、アプリ案内のための専任スタッフを用意しているケースはまず無いでしょう。使い方のガイダンスから、メリットの説明までをアプリ側で完結させることで、現場スタッフの負担を軽減することができます。

こうしたアプリ内チュートリアルの他にも、店頭でアプリをダウンロードした後に、アプリ利用案内のチラシやパンフレットを受け取ったことがある方もいるのではないでしょうか。オフラインで渡される紙媒体もオンボーディングの一つと言えます。

サービスへの理解度と顧客満足度の向上

何の説明も無く「位置情報サービスを許可してください」と言われるのと、「スタンプラリーは位置情報を利用します。スタンプラリーへの参加にあたって位置情報サービスの利用を許可してください」と言われるのでは、どちらの方が受け入れやすいでしょうか。

位置情報以外にも、会員登録やプッシュ通知など、個人情報の提供やスマホ機能の許諾を求めるにあたって、目的や顧客にとってのメリットを事前に理解してもらうことで、利用前後のギャップを小さくし、顧客満足度を保つことができます。

オンボーディングを実施する際に気を付けるべきコト

長すぎるとスキップされる

筆者自身も、ゲームアプリのインストール時にチュートリアルが長すぎて読むのが面倒になり ”スキップボタン” を連打した経験があります。本来AppStoreやGooglePlayのストア上に掲載されるスクリーンショットもアプリを説明する役目を担っているので、ルールがシンプルなアプリや用途の明確なアプリには、過剰なチュートリアルは不要です。「オンボーディング中の離脱」にも注意しなければなりません。

一度チュートリアルをスキップして読み飛ばしてしまったり、使い方をもう一度知りたいという場合に備えて、「Help」ボタンをタップすることでチュートリアルを再確認することができるようになっているアプリも多くあります。

初期フローは簡略化する

主に会員登録のプロセスでよくあるフローですが、
1.新規会員登録 2.メールに届く初期パスワードと初期登録用URLからログイン 3.正式PWの再設定 4.個人情報の登録・・・
のように、いつになったらアプリ使えるの?と煩わしく思った経験はありませんか?

アプリをダウンロードするシチュエーションは、飲食店やアパレル店での接客時や会計時であることが多いので、ポイント機能のアクティベートまでのプロセスが多すぎると「やっぱり結構です」と申し出たくなってしまいますよね。

最近では「初回は会員登録無しでクーポンが使えるが2回目からは会員登録が必要」などのように会員登録を後回しにするアプリも多くなっており、ユーザーがアプリのメリットを実感したうえで会員登録に進めるので、満足度も高くなります。

オンボーディングを

実施するタイミング

冒頭でもお伝えしたように、オンボーディングの本当の役割は、サービスの使い方や意義を最初に伝えるだけでなく、慣れて活用できるようになるまで導くことです。

1.初めてアプリをダウンロードしたとき

多くのアプリに取り入れられているような初期チュートリアルです。初めてサービスを知ったとき、購入した商品ブランドの会員になったときなど、第一印象を決めるオンボーディングです。

2.サービスにある程度慣れてきたとき

一度に沢山の説明をしてもユーザーは覚えきれません。ステップ1.ではアプリを使うのに必要な最低限の操作をレクチャーするのに対し、ステップ2ではユーザーのさらなるロイヤル化に向けて徐々に新しい機能や活用方を伝えていきます。

3.アプリをリニューアルしたとき

アプリ管理側で、機能の追加やアップデートの際には、新しく実装した機能や便利になったポイントについて説明します。

4.離脱したユーザーが復帰したとき

休眠していたユーザーが利用を再開した場合や、利用頻度の低いユーザーが利用した場合に行うオンボーディングです。
たとえば、SNSなど生活に密着したサービスであれば利用頻度が高く、初回起動時に受けたチュートリアルを覚えている人も多いので、オンボーディングにそこまで困らないでしょう。しかし、年に数回しか訪れない観光地や、特別な時にだけ利用する高級なサービスでは、利用を再開したときのチュートリアルは初回同様に丁寧である必要があるかもしれません。

このように、タイミングやアプリの活用度によって必要なオンボーディングは変わりますし、当然アプリのジャンルによっても使い方が変わってくることが分かります。

まとめ

アプリにおけるユーザーオンボーディングにはアプリ内で行われるチュートリアルやオフラインで手渡しされる紙媒体によるガイダンスが含まれることをお伝えしてきました。

オンボーディングのメリットは、初期離脱の防止、コストやスタッフの負担軽減、ブランドの文化や価値の周知、など沢山ありますが、総じて「エンゲージメントの向上」に尽きるかと思います。

またオンボーディングとは、初回チュートリアルのみを指すのではなく、長期的にユーザーを育てていくための伴走ですので、カスタマージャーニーを見据えて実施のタイミングや内容も工夫していきたいですね。

サービスを持続させ、顧客をファンに育てていくためのオンボーディングを一緒に作っていきませんか?オリジナルアプリ制作についてのご要望・お困りごとがございましたら是非研美社までお問い合わせください。